6月
15
ひとの失敗を笑うのはいけないことだ
初めてだったのか。緊張していたのか。
僕は京成線沿線に住んでいる。
都心から帰ってくる場合、最寄り駅の手前にさしかかると車掌さんのアナウンスが入る。
「北総線直通印西牧の原行き電車は、2番ホームでお待ち下さい。」
漢字が多くて読みにくいが、ひらがなだと
「ほくそうせんちょくつう、いんざいまきのはらいきでんしゃは、、、」になる。
今夜も、ちょっと鼻に抜ける高めの声でアナウンスが入った。
「ほ、本日も、京成線をご、ご利用いただきましてありがとうございます。」
なんだ? 今日は調子悪いのか? と思った一瞬後、事件は起きた。
「ほ、ほくちょーちぇんちょくちゅう、い、い、いんぢゃいまきのはらいきでんちゃは、、、。」
まったく言えてない。「子供かよ!」「甘えんぼかよ!」乗客が数人、素敵なツッコミを入れる。
アナウンスは3秒ほど沈黙し、彼が最初から言い直すのかと僕は思ったが、
「、、、2番ホームでお待ち下さい。」
何事もなかったかのようにスルーした。電車の中は明るい笑いに包まれた。
僕も笑った。駅から家に歩きながら、何度か思い出し、また笑った。
ひとの失敗を笑うのはいけないことだが、笑って、書いた。
伝われば、うれしい。