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ありがとう由布院、また来ます。
今回はなんといっても僕にとって大切なこの場所で、翻訳家の柴田元幸さんと一緒に仕事できたことが嬉しかった。
柴田さんにはステージでの朗読と言葉についてのワークショップを2回ずつしていただいたのだけれど、あんな細い体のどこにそんなエネルギーが潜んでいたのかと思うぐらい、観客を圧倒するようなパフォーマンスに驚きっぱなしだった。
特に朗読での、作品世界(オースター、ダイベック、エヴンソンなどの短編)が乗り移ったような、多少狂気を孕んだようなステージには由布院の森に集まった人たちの多くが「こういうの見たことなかった」と驚いていたし、「演劇を1本見たようだった」という感想もチラホラ聞かれたので、大成功といっていいんじゃないかと思っている。
* * *
個人的には奥さまと3人での食事の際に、翻訳界または英米文学界の裏話をたっぷり聴けたことは役得というか望外の喜びというか。
20代のNY在住時代、僕が原書で楽しく読めた唯一の小説がブコウスキーで(他は難しくてつっかえる)、リヤカーの上に本を並べて売ってるストリートの本屋で次々とブコウスキーの著書を買ってむさぼるように読んでいた時期がある。
その話をすると柴田さんは、「それはブコウスキーに友達がいなかったからじゃないかなあ」と一言。
つまり非ネイティブが読みやすい英語の条件は、
スラングを使ってない文章ということ。
(確かにブコウスキーはスラングを使わない)
スラングは仲間内で使う独特な言い回しが基本にあるので、友達のいないであろうブコウスキーはスラングを使う理由も必要もなかったんじゃないか、と。
おお、なるほど〜。
さらにイーストビレッジの名店、セントマークス・ブックショップ(移転したそうだ)にはブコウスキー、ケルアック、バロウズなんかの著書は置いてないそうで、理由は人気があるので万引きされるからだという。
その万引きされた本たちがどこへ流れて行くのかというと、
「ストリートのリヤカー本屋じゃないかな」と。
そういえばそういったリヤカー本屋に置いてある本は、全くの新品なのに何故だか少し安かった。
当時、極貧と言っていいぐらいの生活で、あるとき普通の本屋よりリヤカーの方が少しだけ安いってことに気づき、以来本はずっとそこでばっかり買っていたけれど、知らず知らずのうちに盗品を買っていたってことになるのかもしれないな。
盗っ人の片棒を担ぐってこういうことを指すのだろうか。
おお、なるほど〜っと長年の謎が解けた瞬間でもありました。
とにもかくにも、柴田さんご夫妻、共演のAOKI,hayatoさん内田輝さん両人、由布院関係者各位並びにWaltz of the rain参加者観客の皆様に深く感謝です。
さ、東京いくぞー。
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This is an excerpt of “Thoughs on Rao’s Newsstand” By Motoyuki Shibata
Those who are familiar with the works of …
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〜前略〜
ポール・オースターというアメリカ人作家がお好きな方々は、長篇作家オースターが書いたいまのところ唯一の短篇小説「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」を思い起こすことだろう。ブルックリンの葉巻店に勤める男が、毎朝同じ時間に、街の同じ角に立ち、写真を撮る。一年に365枚、一日も欠かさずに撮った写真が、アルバムにずらりと並んでいる。「オーギーは時間を撮っているのである。自然の時間、人間の時間、その両方を。世界のちっぽけな一隅にわが身を据え、それをわがものにすべく自分の意志を注ぎ込むことによって。みずから選びとった空間で、見張りに立ちつづけることによって」(オースター『スモーク&ブルー・イン・ザ・フェイス』新潮文庫 所収)。
石川拓也がやったことも、発想としてはまったく同じ線上に位置している。実際、オースターが石川の仕事から着想を得て「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」を書いたとしても、決して驚くにはあたらないだろう(現実には、オースターが「オーギー・レン」を書いたのは1990年なので、これはありえないのだが)。発想が同じというだけでなく、オーギーが世界に対して抱いている敬意と愛情と同種の思いが、石川の写真からもひしひしと伝わってくる。
〜後略〜
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1996年から住んでいたニューヨークで、日本に帰国するまで撮り続けていたものがある。2004年まで続けたので8年間の撮影だ。
ニューススタンド。日本で言えばキオスク。街角に立つ、新聞や雑誌やガムなんかを売っている小さな建物。あの内側からの眺めはどんなだろう?ニューヨークに住み始めたあるときそんな疑問が抑えきれなくなった。
紆余曲折はいったん端折るが、グリニッジビレッジ(ダウンタウンと呼ばれるニューヨークでも最古の町のひとつでもある一角)にある”Rao’s Newsstand”という名の店に頼み込んで入れてもらえることになった。撮影のために入れてもらったのであって、従業員になったわけではない。
1996年の冬に初めて撮影させてもらって以来、気が向くとRao’s Newsstandを訪れ繰り返し撮影させてもらった。
8年分の僕が見たニューヨーク。文字通り老若男女、様々な人種、おそらく世界でも類を見ないほど多様なバックグラウンドを持つ人々。そしてゆっくりと変化していく街の風景と店のディテイル。
撮影したものの中から厳選し、169枚の写真で一冊の本を作った。あとがきには僕が尊敬してやまない翻訳家の柴田元幸さんに、無理を言ってエッセイを書いていただいた。「文筆家ではないんだけどな」と苦笑しながら柴田さんは「解説・のようなもの」という題名の、とても柴田さんらしいエッセイを書いていただいた。
今はまだ電子書籍(ebook)という形態だが、今年はこれを元に印刷を実現する年としたいと思っている。電子書籍も以下のサイトで販売を開始している。ぜひ一度目にしていただきたい。
Bus me too. Graphics
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