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インドを観る映画 オススメ3つとそうでもない1つ

posted on 12月 2nd 2015 in インド & 映画 with 0 Comments

 

インド人は映画が好きだ。

僕もインドに行くたびにだいたい映画館を訪れる。チケットは日本では考えられないくらい安い。

歌って踊って、派手でおバカなボリウッド映画もおもしろいが、たまにシリアスな映画もインドでヒットしていたりする。

僕が実際に観た映画の中で、強烈に記憶に残っているもの、もう一度観てみたいものを備忘録的に書いておこうと思う。

 


 

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ボンベイ (1995)

二十歳の頃にボンベイに行った際に観た「ボンベイ」。

僕は2度目のインドの旅で、時は1995年だったと記憶している。

ボンベイがムンバイに改名する前のことだ。

ちなみに僕は今でもボンベイという名前の方が好きだ。インドの街はなぜちょくちょく名前を変えるのか僕はいつも理解に苦しむ。マドラスがチェンナイにいつの間にか変わっていたり。

 

話が脱線したが、その前年(1994)ボンベイでは大きな暴動があった。

ヒンドゥ vs. イスラムの暴動で、多くのけが人と死者を出した。この映画はその暴動をモチーフにしている。

内容はヒンドゥ教徒の男とイスラム教徒の女との恋愛。宗教を超えて深く愛し合っていたはずが、女の家族がヒンドゥ教徒との結婚に大反対。そうこうしているうちにボンベイの大暴動が起こって、、というストーリーだった。要するにインド版ロミオとジュリエットだ。

僕はこの映画をボンベイの映画館で観た。映画大国インドで、この映画は異様なロングランを記録していた。

鮮明な記憶がある。

ストーリーが半ば進み、舞台が1994年に移り変わった際、ボンベイの夜景のカットに「1994」とテロップが流れる。

それはせいぜい1,2秒の短いシーンだったのだが、その瞬間、映画館の中に驚くほど大きなため息が充満したのだ。

暴動から1年しか経っていない時期で、僕の周りで観ていたインド人たちにとっては1994という数字はまだ生々しすぎたのだろう。

当時の恐怖と悲しみの記憶をこの映画に掘り起こされて、観客は深い深い嘆息の中に沈んでいった。

暴動の描写が進むにつれ、あちこちからすすり泣きまで聞こえてきた。

実を言うと映画のディテイルはもう記憶が定かでない。

だが映画館全体がなんとも言えない重い空気に満ちたこの時のことは非常に鮮烈に覚えている。

余談だが現在ではこの映画、どうやら権利関係に問題が生じたようで、インドでこの映画のDVDを見つけるのは困難になっているそうだ。

アマゾン・ジャパンで探してみたらあることにはあるのだが、なかなかぶっとんだ値段で販売されているようだ。希少価値か。でも¥33,000ってどうよ。

 


 

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きっと、うまくいく (2013)

比較的新しい作品。

僕は日本一周する仕事をしている際、福岡の映画館でやっているのを見つけ休日に観に行った。そしてボロボロに泣いた。

その前年にインドに行ったときには、インド映画史の記録を塗り替えるほどの大ヒット。

ラオ家の子供たちが観に行って、その後の数日間はこの映画のことばっかり話していた。

主には例の「アール・イーズ・ウェールー!」をマネして笑っていただけなのだけど。

主演のアミル・カーンはインド映画界でトップの売れっ子と言っていいだろう。二枚目だし、三枚目もできるし演技もうまい。

ただこの映画の主人公は大学の新入生という設定なので、おそらく18歳前後。

カーンの実年齢は44歳。

すごいな〜がんばるな〜なんて思いながらも物語の中に引き込まれていつしか気にならなくなってる。

そこはさすがカーンといったところか。

 


 

ラガーン [DVD]

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ラガーン (2001)

ここではオススメしたいものばかりを紹介するのが正解なのはわかっているのだが、これは例外。

あんまり薦めない。つまんないというよりかは、根本的に日本人には合わないと思う。

なにせ異常に長い。上映時間224分。3時間44分の映画って言われて観たくなる?

僕はうかつにもチャレンジしてしまったのだが、途中何度もくじけてストーリーがわからなくなって、ラストにたどり着く前にギブアップ。

だがこれがインドらしいといえば最もインドらしい映画とも言える。

舞台はイギリス植民地時代のインド。

重税を課そうとする大英帝国の税務官に賭けを挑まれる村の若者。

「クリケットの試合をしてお前らが勝てば年貢を免除してやろう、だがイギリス側が勝てば3倍の年貢を払え。」無茶な賭けをふっかけてくる傲慢なイギリス人。

そして村の若者は仲間を集め、インド人の誇りを守るべく試合に向かっていくというストーリー。

 

この大長編の224分は、ストーリー部分とダンス部分との繰り返しで進んでいく。

話が少し進んだらダンスが入りといった具合で、せっかちな日本人が期待するほど話はスピーディには進んでくれない。

 

この独特なリズムはなんか知っているぞと思いながら観ていたのだが、考えてみればこれはクリケットの試合のリズムなのだ。

クリケットは一見野球に似ているスポーツだが、試合時間が異様に長いこともよく知られている。

一つの試合が決着つくまで5日間なんてこともふつうなスポーツだ。

インド人はみんな大好きクリケット。

ゆっくりのんびり、攻守交替しながら徐々に進んでいくゲーム。これがラガーンにも共通して流れているリズムだ。

 

クリケットの試合を観る習慣のない日本人には、なかなか酷な映画だと言わざるを得ない。

日本人はやっぱり野球のリズムくらいがちょうどいいはずだ。

ちなみに主演は例のアミル・カーン。

ただし「きっと、うまくいく」が2013年公開、ラガーンは2001年。カーンはこの映画の場合は正真正銘の若者だったのだ。

 


 

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スラムドッグ$ミリオネア (2008)

これを書くのは今さら感が強すぎて気後れする。だが何度観ても楽しめる名作なのは間違いない。

ストーリーが秀逸すぎてついつい忘れるが、これもボンベイの暴動がモチーフになっている。

兄弟が孤児になるきっかけがヒンドゥとイスラムの対立であり暴動なのだ。

そう考えると、宗教っていったい何なのかつくづく考えてしまう。

宗教が世の中に働きかける力学は、100%ポジティブな方向ばかりではない。むしろネガティブな作用が多すぎやしないだろうか。

宗教のせいで数多くの不幸な体験を甘受することになったとしても、人が信仰を捨てない理由は何なのだろう。

 

途中、子供時代の主人公がコエダメに落ちるシーンがある。

トイレで用を足していたら、表に主人公の大好きな映画スターが突然現れた。

表ではファンたちが大騒ぎ、主人公も早くそのスターにサインをもらいに行きたいのだが、主人公の兄が意地悪をして、トイレのドアをロックしてしまう。

あせった主人公は仕方なくコエダメの中に飛び込んで、ウンコまみれになりながらスターに向かって走っていくというシーンだ。

このシーンの設定で、現れた映画スターはアミターブ・バッチャン。

アミターブは日本でいえば高倉健さんのような国民的大スターだ。誰もが知っていて、誰もが好き、そんな感じの俳優。

ご存知のようにヒンドゥ教というのは多神教で、今まで土俗信仰の神などを吸収しながら成立してきたという過去がある。

早い話がなんでもかんでもヒンドゥの神にしてしまうのだ。

 

かのブッダも初期には邪道なんて言われていたのが、ヒンドゥ教はいつの間にかちゃっかり彼をヒンドゥの神の一員にしてたりする。

マハトマ・ガンディーも同様で、彼の死後から数年に一度のペースで、ガンディーをヒンドゥの神さまにしようという運動が盛り上がるらしい。

その度にいたって真剣な神学論争が繰り広げられるのだという。

そしてこの話は続きがあって、最近ではどうやらアミターブ・バッチャンを神さまにしようと運動している一派までいるらしい。

アミターブもガンディーも、国民的人気という点では甲乙つけがたい、ガンディーを神さまにという運動があるならアミターブだって、というのがその理由らしい。

一派は現代ヒンドゥ界に、ごく真剣な論争を巻き起こしたという話だが、ブッダ、ガンディーとアミターブが違う点は明らかで、アミターブは今もまだ存命中なのだ。

しかも俳優としてもバリバリ現役だ。

こういった論争が真剣に行われたりすることが、インドのおかしさであり懐の深さでもあると、インド贔屓の僕は思ったりもするが、その感想がインド贔屓にすぎないことも、それはそれでよくわかっている。

 

 

 

 

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写真家 ニューヨークの街角に建つニューススタンドを1996年〜2004年まで撮影した写真集「Rao's Newsstand」を発表。ウェブサイトBus me too.Graphicsにて販売中。  

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