「神々の山嶺」が映画になるらしい
夢枕獏「神々の山嶺(かみがみのいただき)」が映画化するという。
僕はまったく寝耳に水だったのだが、映画化するぞ撮影するぞというニュースは今年の前半から流れていたようだ。
主演が岡田准一、脇を阿部寛と尾野真千子。
ということは深町を岡田くん、羽生が阿部ちゃんということか。
すごいキャスティング。特に他人に心を開かない羽生の役を阿部寛がやるというのはとても楽しみだ。
「神々の山嶺」は、誰もが文句のつけようのない名作だと勝手に思っている。
僕は谷口ジローが作画を担当した漫画版が好きで、繰り返し通算30回以上読んでいるのではなかろうか。
「ジョージ・マロリーはどこに」という文章を書いたのはもう4、5年前になるが、その時も「神々の山嶺」は僕の念頭にあった。
人間というのは不思議なもので、自分でも知らず知らずのうちに「執着」や「中毒」を心の中に作り出し、さらにそういった「執着」や「中毒」を自分自身よりも大きく育ててしまうことがある。
「執着」「中毒」に自分自身が動かされている状態と言ってもいいかもしれない。
世の芸術家なんかはその最たるものであろうし、いや、なにかに向かって進み続けている人というのはたいていそういうものかもしれない。
「神々の山嶺」に出てくる登山家たち、特に阿部寛が演じる羽生という男は、そういった類の人間だ。
いわゆるふつうの生活、ふつうの幸せに完全に背を向けて、羽生は山に登る。
山と言っても高尾山ではない。富士山ですらない。
世界最高峰のエベレスト。しかも誰もが挑戦したことのなかった南西壁の冬季単独登攀。
この狂気ともいえる羽生の執着を、漫画はまったくの過不足なく表現していたが、映画の方は果たしてどうだろうか。
くどくなるが、阿部ちゃんの羽生が非常に気になるのだ。
集英社
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