ニューヨーク・パブリック・ライブラリーの写真コレクション20万点が無料で使えるようになった
Free for All: NYPL Enhances Public Domain Collections For Sharing and Reuse | The New York Public Library
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ニューヨーク・パブリック・ライブラリー(NYPL)が1月5日に発表したところによると、著作権の切れた所蔵資料のデジタルデータ約20万点をウェブサイト上でダウンロードできるようにしたという。
誰でも自由に、なんの許諾も登録もなく高解像度のデータが使用できるというからすごい。
中には写真を少しでもかじっていれば必ず見たことのあるような写真もある。
1930年代の大恐慌時代に、農業安定局が写真家を集めて大規模なフィールドワークを行ったプロジェクト “Farm Security Administration Photographs” には、ドロシア・ラングやウォーカー・エヴァンスが撮影した、現代ドキュメンタリー写真史の出発点とも言えるシリーズが気前よく掲出されていて、必要なサイズを選んでダウンロードできるようになっている。
タイトルはそれぞれ
「カリフォルニアの貧窮した農業従事者、7児の母、32歳、ニポモ・カリフォルニア」
「洪水避難者キャンプの食事時に並ぶ黒人たち、フォレストシティー・アーカンサス」である。
一枚目のドロシア・ラングの写真は “Migrant Mother” (移民の母)というタイトルの方が馴染みがあるが、上の長いものが正式なものなのだろう。初めて知った。
ウォーカー・エヴァンスの写真は改めて見ると、タイトルにいきなり「ニグロ」とあって若干ヒヤリとするが、1930年代というのはそういう時代だったんだろう。
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また同じく1930年代の写真家、ベレニス・アボットが撮影した”Changing New York”「変わりゆくニューヨーク」のシリーズ。これはFederal Art Project(連邦美術計画)といって連邦政府が実施した芸術振興政策に応じて撮影されたものだ。
ここにある写真は当時のニューヨークを淡々と、アンチ・クライマックス的に撮影されたものが多い。
自分の表現というより場の記録に重きを置いていて、ベレニス・アボットがのちにアジェの写真を世に出す役割を果たしたと聞いて非常に納得した覚えがある。
アボットが撮影したのは1930年代のニューヨークなのだが、僕が知っている場所も幾つかある。
僕は1996年から2002年までこの街に住んでいたので、おおよそ60年の時を超えてまだ残っているお店なんかも。
下の写真はマクソーリー・エール・ハウスというニューヨークで最も古いパブだ。創業1854年で、自家製ビールを売っている。注文はダークかライトの2択だ。
このパブには僕もなんども足を運んでいて、現在では女性も入店できるが1970年に裁判で負けるまでは女人禁制だったんだという。意外とアメリカでも大相撲の土俵みたいなしきたりがあったりするのだ。
そして上の写真が1935年のニューススタンド。
ニューヨークに住んでいる間、ニューススタンドの店内に入れてもらって中から外のストリートを撮影するといったことをしていたのだが、僕がいた時代のニューススタンドとこの時代のものはさほど変わらない印象がある。
目立った変化はやはりモノの値段で、ミルクやソーダが10セントっていうのは強く時代を感じさせる。
思い返してみれば僕がニューススタンドの撮影をしていた8年の間にも、タバコの値段がグイグイ上昇していったのは見て取れた。
撮影した写真を時系列に並べてみると、$2.50だった一箱が$3.75、$5.25、$7.50と急上昇して2001年の同時多発テロ以降ではついに$10を突破していた。
もしご興味があればこちらから。
Bus me too. Graphics https://www.busmetoo.com/?lang=ja
このニューヨーク・パブリック・ライブラリーのコレクションには他にも1900年代初期のエリス島を撮影した写真シリーズや作家の手書き原稿や、はたまた源氏物語絵巻まで収蔵されているので、とても1日や2日では見切れない。
度々見に戻ろうと思っている。
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蛇足だが、エリス島を撮影した写真シリーズの写真家は”William Williams”という。
日本人だと「段田団」みたいなことなんだろうか。「山本山」みたいなことなんだろうか。ちょっと違うか。覚えやすくて良いと思うが、本人はどう思っていたのだろうか。
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