6月
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posted on 6月 9th 2020 in photographs with 0 Comments

「ボッティチェリ 疫病の時代の寓話」 著:バリー・ユアグロー 訳:柴田元幸  ignition gallery 衝撃。この文章を書いているのは2020年6月4日の午後です。今日、私に宛てて届いた封筒の中から、この小さな本が出てきました。差出人は愛知のignition gallery。中から出てきた本の表紙には私が親交もあり尊敬してやまない英米文学翻訳者の柴田元幸先生のお名前がありました。著者はアメリカ・ニューヨーク在住の作家、バリー・ユアグロー。翻訳はもちろん柴田元幸。「★この本について」と題された柴田先生のあとがきによると、この物語は現在の都市封鎖状態の続くニューヨークにいるユアグローから柴田先生のもとにメールで届いたとのこと。届いたのは2020年4月5日から5月11日にかけてのことだそうです。一本目の「ボッティチェリ」が添付されていたメールには、「正気を保つため」に書いた、とあった。少しあいだが空いてから、二本目以降の作品が続々送られてくるなかで、どうやらこの非常事態が契機となって、作者が自分の中の深い部分に降り立っていることが伝わってきた。もちろん日本で翻訳が出れば喜んでくれただろうが、出版したいからというより、ただただ書かずにいられないから書いていることがよくわかった。 「★この本について」 柴田元幸 より引用 「正気を保つため」。物を作る理由や動機として、これほど切実なものが他にあるでしょうか。そして「自分の中の深い部分に降り立って」、そこから拾い上げたものを12の寓話に変換し、この時代のこの空気を封じ込めるという作業をこのスピードでやる(もしくはやらざるをえなかった)という作者ユアグローの力業。それを受け取った柴田先生の翻訳、ignition galleryのデザイン・装丁・製本のこのスピード感。この一冊はもう完全に(良い意味で)野蛮人どものしわざだなと、封筒から取り出した瞬間に大きな衝撃を受けるのと同時に、「自分の『作る』という行為は、そこまで切実な理由を持ってやれているだろうか」という少し焦りにも似た、小さな棘のような感情を持ってしまったのも、実は正直なところです。 #ignitiongallery #柴田元幸#バリーユアグロー
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石川拓也 写真家 2016年8月より高知県土佐町に在住。土佐町のウェブサイト「とさちょうものがたり」編集長。https://tosacho.com/

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