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20 Years Later の続きです。
ミュージシャン志望(当時)が突然くれたメールによると。
今では地元の名古屋でお店をやっている。そのお店に、先日ある雑誌が取材に来た。取材の終わりに、何の気なしに「石川拓也ってカメラマン知ってる?」とその取材の撮影を担当していたカメラマンに尋ねた。それがたまたま僕の友人だった。
10年ほど前に、これもたまたま名古屋の本屋で、僕が雑誌で発表した写真を見た。写真の世界にいることを知り嬉しかったが気後れしてずっと連絡しなかった。でもこのたまたま(たまたまが多いが)訪れたカメラマンが僕の友人だったという偶然と、自分も胸を張って報告できるような店も構えたことだし、とメールした。
そういった内容だった。
20年の時が一気に縮まって、あのときあのモロッコの朝靄の中で嗅いだ匂いが蘇ってくるような感覚に襲われた。
すぐにジャーナリスト志望(当時)に連絡して、名古屋で集まることに決めた。
集まったのは4人だが、女性はミュージシャン志望(当時)の奥様で、モロッコで旅をした香港の女性とは別。彼女に限らず香港の人は一般的に本名よりも通称で名乗ることが多いのでなかなか探しようがない。
ジャーナリスト志望(当時)は大学卒業後NHKに記者職として就職。現在では福島のデスクとして、ある意味日本の最前線で仕事をしている。
ミュージシャン志望(当時)はその後いろいろあったそうだが、現在は名古屋でハンドメイドの革靴のお店を開いた。Bolero Bespoke Shoe & Bootmakerという名の高級感漂うおしゃれな店だ。そういえばモロッコのときも彼はひとりおしゃれだった。
カメラマン志望(当時)は、現在もカメラマンです。なんとかやってます。
みんなそれぞれこの20年の間にいろいろあっただろう。
いろいろ無いわけがない。
良いことばかりでも順調なことばかりでもない。
でもなんとかこうして集まって20年前の話で笑って盛り上がれる。
20年。
悪いことばかりでもない。
ミュージシャン志望(当時)のノートに僕が書いたらしいモロッコの犬。
Bolero Bespoke Shoe & Bootmaker
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ちょうど20年前のこと。
僕はバックパックを担ぎ薄汚れた身なりで貧乏旅行者をやっていた。
アジアからスタートし、ゆっくりとアフリカ(東)、ヨーロッパ、そしてまたアフリカ(西)と、けっこう無軌道に気の向くままに放浪の旅を続けていた。
基本的には一貫してひとり旅で、それを寂しいものとも思わなかったし、ひとりで行きたいところへ行きたいときに行くという気楽さは当時の僕にとっては何よりもかけがえのないものに感じられていた。
その一年半に渡るひとり旅の中で、一国だけ例外がある。
僕の記憶の中で光り輝く例外だ。
それがモロッコでの4人旅。たまたまモロッコの食堂で顔を合わせた同年代の日本人3人と、香港人女性1人で、なんとなく一緒に旅をすることになった。
4人でアトラス山脈を一周巡る、つまりマラケシュやサハラ砂漠に立ち寄りながらモロッコを一周するという旅に出たのだ。
ひとりは22才で、ジャーナリストを目指していた。大学を休学中、帰国したら就職活動に励むという。
ひとりは21才で、ミュージシャンになりたかった。ジャズをやりたいと言っていた。
ひとり(僕)は20才で、カメラマンになろうと思っていた。写真のこと全然知らないのに。
誰ひとりとして先のことはどうなるかわからない年代で、今思うと背伸びとやせ我慢と生意気さだけを固めて作った泥人形が服を着て歩いているといった感もある。
ひと言でいえばクソガキってことだ。
サハラ砂漠に最も近い村でガキンチョと仲良くなり、彼の案内で砂漠に住むベルベル人のテントまで砂を踏みしめて歩いたり、迷路のようなカスバの中で絶望的な迷子になったり、ラクダの肉を買ってきてキャンプ道具で調理したり、一緒にいたのは3週間ほどだったがモロッコという国の魅力と共にその旅の楽しさは今でも僕の中にくっきりとした形を残している。
アトラス山脈を中心にモロッコをぐるっと一周し、フェズという町でこのチームは解散した。
僕以外の3人はヨーロッパへ戻り、僕はさらに南下して西アフリカへ。
その後この4人が集まったことはない。
僕はその後そのままニューヨークに住み着き、ちゃんと日本に帰国したのは8年後になっていた。
ジャーナリストを目指す22才(当時)とはたまに連絡を取り合ってはいたのだが、ミュージシャン志望の21才(当時)とはいつの間にか音信不通になってしまっていた。ジャーナリスト志望の22才(当時)と顔を合わせるたびに、「彼はどうしているんだろう?」と半ば恒例のように言葉を交わしていた。
それが先日、ミュージシャン志望の21才(当時)から突如連絡があったのだ。
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