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写真とはなにか 写真家が受賞を辞退した理由 2

posted on 11月 12th 2015 in photographs with 0 Comments

スクリーンショット 2015-11-12 0.18.14

昨日書いた「写真とはなにか」に対していくつか質問などいただいたので、少し詳しく書こうと思います。

Photojournalist Exits Prestigious Contest After Cloned Straw Discovered

上の写真はフォト・ジャーナリストであるDavid Caird氏が撮影したもの。

この写真を含む数枚(正確には何枚か不明ですが、複数枚のグループ写真だったようです)によって、Caird氏はオーストラリアで開催されたニコン・ウォークレイ賞という名誉ある写真コンテストのファイナリスト3人のうちの1人にノミネートされていました。

この賞はフォト・ジャーナリズム(報道写真)においてオーストラリアでは権威のあるものらしいです。僕は今回初めて知りました。

さてCaird氏がファイナリストにノミネートされた後、事件が起きます。

この写真が撮られた同じ場所同じ時刻、同じ構図で写真を撮っていたという「匿名の」写真家が、以下のことをコンテストの主催者に指摘したのです。

「この写真は過剰に修正されている。なぜなら同じ場所同じ時刻、同じ構図で撮影した私の写真には子ゴリラの頭の上に藁が写っているのだから」

スクリーンショット 2015-11-12 0.18.33

 

それが上の写真。なるほど藁が写っている。昨日の書き込みで、僕は英語のStrawを文字通りストローと勘違いしたのですが、正確には「藁」ですね。写真下部にも写っている藁の1本が子ゴリラの頭にくっついていたと、そういうことみたいです。

Caird氏が提出した1枚目の写真には写っているはずの藁が写っていなく、ということはCaird氏がデジタルの後処理の過程でこの藁を消した、という可能性が出てきました。

それの何が問題なのかというと、このニコン・ウォークレイ賞というのは報道写真に対する賞であり、コンテストのルールとして、画像の修正や合成にはなかなかはっきりとした制限が定められています。

つまり、「クロップ・デジタルスポット・ドッジ・バーン以外の画像の修正を認めない」と。

この4つの修正を簡単に説明すると、クロップは画像を切り取ること。

デジタルスポットはおそらくホコリ除去。(フィルム時代からスポッティングという技術はあり、細い筆で写真に直接絵の具を載せていく作業でした。つまりホコリなどに影響された部分を筆で書いていく作業)

ドッジは覆い焼きとも言って、画像の一部分を明るくする技術。バーンはその逆で暗くする技術。焼き込みとも言います。

この4つは要するに、フィルムで撮影して暗室でプリントしていた時代から変わらず存在する写真の技術です。そこにあるものをなかったように見せたり、またなかったものを合成したり、そういったデジタル時代の画像修正の技術とは若干趣が異なるのはお分かりでしょうか。

(続く)

 

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石川拓也 写真家 2016年8月より高知県土佐町に在住。土佐町のウェブサイト「とさちょうものがたり」編集長。https://tosacho.com/