4月
02

ラサに行ってもいいですか? | 偽装中国人バスの旅 12

posted on 4月 2nd 2014 in 1995 with 21 Comments

lhasa6

 

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薄暗い橙色の裸電球の下で、白いヤモリが壁を横切った。

 

ネズミ男はさっきよりも輪をかけて不敵な笑みを僕に向け、チケット買いに行くから金をよこせ、と詰め寄ってくる。

最初から濃厚な胡散臭さを感じている僕は、4千元よこせ、と迫ってくるネズミ男をなだめすかし2千元だけその場で渡し、残りはチケット持って来てからだ、として手を打った。

明日また来る、と言い残してネズミ男は街の闇に去って行った。

暗くシンとした部屋で、少し冷静になって考えてみる。

どうやらこれは、2千元やられたということか?

どう考えてもネズミ男がチケットを持って戻ってくるとは思えなくなってきた。こういう手の詐欺なんだろうか。

歯嚙みするほどではないものの、騙されたかもしれないことに少し悔しくなってきて、勉強代勉強代、と唱えながらシーツもない粗末なベッドに潜り込み寝てしまうことにした。

電燈の下、くるりと振り向いたヤモリが不敵に笑ったように見えた。 

 (つづく)

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石川拓也 写真家 2016年8月より高知県土佐町に在住。土佐町のウェブサイト「とさちょうものがたり」編集長。https://tosacho.com/

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