神さまがくれた花 9
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寺に到着すると、再び昨日と同様に席を確保し、神さまの降臨を待つわけである。
女性陣は女性用の席に、席というか地べたに座ってるだけだが、固まって待つ。どうやら神さまはもちろんのこと、弟子であるこの寺の僧侶たちは女性との接触を禁じられているようだ。僧侶と女性が話をしている姿すら見られない。
そうこうしているうちに、再び神さまの降臨。群衆は昨日と同様、再び大きな歓喜に包まれた。
昨日と同様に、ゆっくりと本堂に向かう神さまと弟子。それを潤んだ目で見つめる熱心な信者たち。すべてが昨日と同様に進行していく。神さまは車いすに載ったまま本堂の中に消えて行った。
その場に座ったまま待つ事数十分、神さまと弟子は日課の祈りを終え、本堂の外にゆっくりと出てきた。
そしてまた始まる神さまと信者の短めの謁見。
群衆の中のひとりに話しかけられ、短く会話を交わした後、弟子から信者へ花が手渡される。昨日見たのと同じ光景が僕の目の前で繰り返される。ひとり目が終わり、二人目へ。会話の後、花が手渡され、神さまは移動する。
弟子に車いすを押されて移動したさきは、またもや僕の目の前だった。
弟子が神さまに何かをささやき、神さまは僕の方を見てニコニコとうなずいた。もはや昨日と同じ今日。繰り返される毎日。
「神さまはあなたが繰り返し来られるので喜んでおられる」
そう言って弟子はまた花を僕の掌に落としてくれた。神さまの力が宿った貴重な花。ジャグディシュが側で見ている。衝撃というか羨望というか、なんとも言えない目で見ている。
「神さまに何か言いたい事がありますか?」
これまでもが繰り返しとは。まさか2日連続で神さまに話しかけられる事になるとは思ってもいなかったので、僕は全く何も用意していない。言ってみれば僕の頭の中も昨日と同じだ。
「お、お会いできてうれしいです。。ジェイスワミナライ!!」
昨日とほぼ同じ薄っぺらい言葉しか出て来ない。それでも神さまはニコニコと頷いてくれた。僕の隣に座っていた知らないおっさんには白い目で見られた。
「もっと他に言えないのか?神さまと話せるなんてそうそうあることじゃない」
神さまが退出した後で、小声でたしなめられた。言われずとも、自分でも全く同じ事を思っていた。
(「神様のくれた花10」つづく)