アボリジニを読むための3冊
オーストラリア大陸中心部・レッドセンターを旅する前に僕が読んだ本。(読んだ順)
英治出版
売り上げランキング: 299,260
ソングライン
ソングラインとはアボリジニが先祖代々伝承してきた「歌」であり、その詩には一族の神話や歴史、領土の説明までかなり詳しい情報が含まれているのだという。そのソングラインを集める旅に出たブルース・チャトウィンの自伝的作品。
未だ謎の多いアボリジニの文化をいち早く紹介した一冊として世に受け入れられたものと僕は理解しているが合っているだろうか。
話があっちに行ったりこっちに飛んだり、延々とチャトウィンの過去の話が述懐され続けたり、はっきり言って読みやすくはない。従って読んで面白いという感想も出ない。
事実、僕は途中で何度も話がわからなくなり、読み終えた頃には「結局なにが言いたいの?」という感想を持つに至った。僕の読解力の問題も大いにあるだろうが、難解になる必要のない話を妙に難解に語るという悪癖をチャトウィンは発揮していやしないか。
筑摩書房
売り上げランキング: 38,350
隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民
現代の、等身大のアボリジニが描かれた一冊。とても地に足のついた内容は、次に紹介する「ミュータント・メッセージ」とある意味真逆の存在とも言える。
すごく誠実に、誇張もなく見たまま感じたままを書いているのがわかり信頼できる。ただ、まるでぶっとんだところのない本で、淡々と始まり淡々と終わる。正直・誠実・等身大。普通のアボリジニ。日常のアボリジニ。
そういったところに興味があるなら最適な本なのだろう。くどくなるが、決してぶっとんだ内容ではない。
角川書店
売り上げランキング: 34,168
ミュータント・メッセージ
この一冊は抜群に強烈に面白いのだが、いろいろと問題も孕んだ本。
というのも当初ノンフィクションとして出版されたこの本の内容に対して、当のアボリジニから疑問符が付けられた。要するに、ここに書かれたことはウソではないか、作者の創作ではないかという問題。
これを読んだあるアボリジニの老人はこの本の内容はウソばかりだと激怒したと言う。
巻末の推薦文を、あるアボリジニの長老が書いているのだが、調査の結果、その長老も実在しないという結論になったらしい。架空の人物が書く推薦文。とても胡散臭い。
現在はフィクションとして出版されているというのも胡散臭くて面白いエピソードだと僕は思う。もちろん「アボリジニ」の文化について書いているのだから、そして最初はノンフィクションとして世に出たのだから、事実かどうかは重要な要素である。ウソはいけない。
ただ、怒られるのを覚悟して言えば、ここにあるウソはとても面白い。人間というものの存在をいちど分解して再構築し直すような作業がこの話にはある。赤い大地に照りつける太陽の下に、強烈に誘われる。
退屈な事実より楽しいウソを読みたいと思っている人には最高の一冊で、アボリジニ関連の資料として読みたいと思う人には最低の一冊。